今度は、依頼人のTさんも同行する。ここぞという場所を示してもらわなければならないからだ。予想よりも早かったと、Tさんは我々の作業能力を評価してくれた。ただ、坑木の組み方は、Tさんから見れば度が過ぎているようで、苦笑しながら眺めていた。 私が先頭に立ち、縦坑の周囲に組んだ坑木を梯子代わりにして下降する。足が着きそうになったとき、ろうそくに火をつけた。大丈夫、酸素はあるようだ。体勢を入れかえて前方を見ると、高さ2メートル以上ある半月形の空間が明かりの中に浮かび上がった。奥行きは3メートルといったところ。そこからさらに直径1.5メートルほどの斜坑が続く。斜坑は5メートルで二手に分かれ、どちらも2メートル前後で行き止まりになっていた。この穴はすべて土砂が詰まっていたのを、Tさんたちが掘り出したものだ。周りは硬い岩盤になっている。 二名氏に続いて3番目に降りてきたTさんは、半月形の空間を懐かしそうに見回したあと、自信たっぷりに言った。 「この足元が怪しいとにらんでいるんだけどね」 幅1メートルほどの床面は、まだ上から落ちてきた土砂に覆われていたが、それを足で少しはねのけてみると、明らかに左右の岩盤とはちがう白っぽい岩が露出した。よくよく見ると、石畳のように一定の大きさの岩をきちんと並べて固めたような感じがする。 「なるほど、これがふたで、下は空洞になっているわけですね」 私は瞬時にトンネルの構造が理解できた。斜坑から奥に続く穴の役割もわかった。岩盤をくり抜いて財宝を収める小部屋をつくったあと、ふたをしたのだとすれば、掘り出した岩の一部をキープしておく場所が必要になる。それが奥の部分なのだ。Tさんの読みは当たっている。まちがいない! |
|
|
Copyright 2000~2017 Mitsuhiro Yaeno. All rights reserved. 無断転載・複製禁止