■立て坑の水が抜けた! はたしてその底に…


10月3日、またしてもふさがった坑口をこじ開け、中に入ることができたのは午後3時過ぎ。いよいよ排水装置の出番だ。発電機や電動ポンプは持ちこめないので、ネットで探していたところ、災害時などに使う高性能の手動ポンプが見つかった。1ストロークで1.3リットル、1分間に50リットルの排水が可能。すでにひと月以上前に搬入済みだ。また、高橋グループの荻原良二氏は水道工事の専門家で、こういう仕事はお手のもの。長さ50mのスパイラルホース2本をポンプにつなぐ。ポンピングが始まってから数分後、坑道の外のホースを水が流れるのが確認され、斜面の下の方に下ろした先端から勢いよく水が吹き出した。この時点でポンプを開放にして固定すれば、あとは放っておいてもサイフォンの原理で自動的に排水されるというわけだ。
ほぼ1時間で立て坑の水の半分は抜けた印象だったが、底の方ほど穴は広がっているから、そう簡単にはいかない。完全に水が抜けたのは翌朝のことだった。
スグレモノの手動ポンプ
ポンプにホースをつないで坑道の外へ
坑道の中間地点やや手前 写真/金剛寺拳 完全に水が抜けた奥の立て坑
立て坑の真上の天井に、太さ6~7センチの丸太がはめ込まれていた。滑車を吊すには適当でないし、明かりを取りつけるのに使ったものではないだろうか。 立て坑の底から取り出した厚さ2㎝ほどの板。表面が焼いたように黒ずんでいる。
立て坑の底の約半分が砂地だった。千両箱を隠すスペースとして十分とは思えなかったが、掘れるだけ掘ってみようということになった。
■どうしたことか、千両箱が見当たらない!

立て坑の深さは2.8mあった。水深が2.5m。あとで計算してみたら、水の量はおおよそ8立方メートルあったことになる。
坑道探しを始めてから17年、我々はようやくここまで辿り着いた。水底に沈んでいた昇降用のステップは腐食が進んで使い物にならなかったので、丸太を削って新たに作った。それを穴の底に落とし込んで固定すると、おそるおそる降下していった。水面からも見えていた坑木やステップが折り重なっている。平べったい板もある。「箱のようなもの」を探したが、すぐには見当たらない。「この下か?」 と、黒ずんだ板や丸太をどけてその下を探ったが、ない! それに、千両箱とセットで存在するはずのホトケ様の影もない。「う~ん、なぜだ」 納得できない。自分自身にその理由を説明できない。
穴の底がわずかに軟らかく、掘れそうな感じだ。「掘るしかないな」 日本トレジャーハンティング・クラブ会員、東裕久氏が率先して発掘を始めた。
 

立て坑の底の調査は実質1日だけ。さらに掘れば千両箱が顔を出すのか。
それとも坑道内のほかの場所なのか? 結論は次回に持ち越された。


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