■宝探しの手順 ■これが宝探しの現場 ■埋蔵金の法律知識
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宝探しの手順    掘る前にやらなければならないことがたくさんある

1.「土を掘るより資料を掘れ」……目と耳と足で情報を集めよう
「埋蔵金探しは土を掘ることだけだと思ったら大まちがい、掘る前にやらなくちゃならないことがたくさんある。まずは資料を掘ることだ」
 という名言を残したのは、埋蔵金研究の権威といわれた畠山清行氏(1905~1991)です。氏は、大正時代の末から50年以上の歳月をかけて、全国約200か所を歩き、各地の埋蔵金伝説とそれに関連する資料を調べ上げました。昭和の初めごろまでは、
各種の古文書や絵図などがまだ出回っていたそうです。
 残念ながら、いまはそういったオリジナル資料を実際に見ることはほとんどできません。そこで、現代のトレジャー・ハンターたちの多くが、畠山氏の著書『日本の埋蔵金(上下2巻)』『新・日本の埋蔵金』(番町書房/写真右)をバイブルのようにしているのです。ただ、この3冊はすでに絶版になっていて、出版社もなくなりましたので、新たに購入することはできません。したがって、図書館で借りるか、古本屋で気長に探すしかありません。
 あとは、1つ1つの伝説の解説はコンパクトですが、有名なものを 網羅している、拙著『日本の埋蔵金100話』を参考にしていただきたいと思います。
 書籍だけでなく、ときどき歴史関係の雑誌で埋蔵金の特集を組むことがありますから、それを見逃さないこと。また、一般の雑誌や新聞の記事になる機会もあるので、常にチェックしておくことが大事です。「埋蔵金」という言葉に敏感になりましょう。それが、資料集めの名人になるコツといえます。
 なお、雑誌や新聞の古い記事は、財団法人大宅壮一文庫(東京都世田谷区八幡山)にたくさんありますので、有料になりますが探してみるのもいいでしょう。

 しかし、まだ専門家もキャッチしていない隠れた伝説が、全国各地にあるはずです。どうせなら、そういうものを調べてみようではありませんか。土地のお年寄りから言い伝え聞き出すとか、あるいは、教育委員会を訪ねると、郷土史家の先生を紹介してもらえるはずですから、そういった方にお話をうかがいましょう。ひょっとしたら、「あそこのうちには古文書が残っているよ」なんてことにも…。これこそ、資料を“掘り当てる”ってことですね。

2.「ありえない話が多すぎる」……伝説の信ぴょう性の見分け方
 さて、埋蔵金情報を手に入れたら、次にどうするか。その信ぴょう性をじっくり分析してみましょう。トレジャー・ハンターのターゲットとなるのは、ほんとうにあるかもしれない財宝です。伝説をうのみにしてはいけません。世の中には、ありえない話が実に多いのです。まずは疑ってかかったほうが無難です。
 最初に、伝説がはたしてリアリティーのあるストーリーとして成り立つかどうかについて考えなければなりません。そのために、正確な新聞記事などを書くときの要素とされる“5W・1H”を頭に入れてください。5Wは、Who(だれが)、When(いつ)、Where(どこに)、What(何を)、Why(なぜ)で、1HはHow(どのように)ですね。この中でとくに重要なのは、(何を)と(なぜ)です。埋蔵するような財宝がほんとうにあったのか、また、埋蔵しなければならない事情があったのか、ということです。伝説には、実在しない人物も登場することがありますから、これもチェックしましょう。時代背景も正確にとらえなければなりません。
 ありえないといえば、日本三大埋蔵金の「豊臣秀吉」「徳川幕府」「結城晴朝」は、いずれも伝えられる金額が実在する可能性はほとんどありません。でも、ほかに納得させられる部分がありますから、ゼロとは言い切れないだろうということになるのです。


3.「宝探しは昔の人との知恵比べ」……謎文の解読に挑戦

 財宝を隠した人は、いろいろ知恵をしぼったはずです。簡単に見つかってはいけないし、だからといって、だれにもわからないようでは、目的を果たすことができません。
 そこで、しかるべきときに、しかるべき人に探し当ててもらえるよう、何らかの手がかりを残したと考えられます。実際に、財宝のありかを示したと思われる文書がいろいろ残されていました。ところが、「何をどこに隠した」というようなストレートな表現のものはほとんどなく、たいてい謎文の形になっています。それを解読する手がかりは、現在では易や風水といった占いの世界でしか使わない文字、言葉、記号にあるようです。
 昔の人は今よりも運勢を重要視したはずですから、財宝の埋蔵にあたっては、最良の時と場所を選んだことでしょう。そして、謎文にもそれが反映されているように思えます。ですから、昔の人が方位や年月日、時刻を表すのに使った「十干十二支」の知識は最低でも身につけなれればなりませんし、さらに一歩進んで、五行(木・火・土・金・水)、九星(一白水星~九紫火星)、八卦(乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤)なども勉強しておく必要があります。謎文の解読は一種のパズルを解くようで、実におもしろいものです。まさに、昔の人との知恵比べですね。


4.「不動のものを追え」……隠した者の身になって推理する
 トレジャー・ハンターの中には、机に向かって古文書の謎解きだけを楽しんでいる人もいます。それはそれで、おおいにけっこうだと思います。謎解きは宝探しの醍醐味の一つですから…。
 でも、せっかくならフィールドへ出て、実在するかもしれないターゲットを追求してみましょう。目星をつけた場所へ行き、埋蔵場所をピンポイントまで絞り込んでいきます。そのときに頭に入れておいてほしいのは、何らかの目印があるかもしれないということです。一度地下に物を埋めると、時間がたてば埋めた本人でさえ場所がわからなくなってしまいます。そこで、必ず目印を置くことを考えるはずです。置かれているのは、そのものズバリの場所ではないかもしれません。少し離れたところに、複数の目印を配置し、それらを結んだ線上、あるいは交点などに隠した可能性があります。
 この世界では、そういった目印を探す場合、「不動のものを追え」が合い言葉になっています。時間がたっても、めったなことでは動くはずのないもの、つまり、自然物では特徴のある山や大木、目立って大きな岩など。人工物としては、お寺や神社、そのほか、宗教に関係した石碑や石宮(稲荷、八幡、観音、道祖神、地蔵、不動尊など)といったものです。自分だったらどんなところに埋めるか、何を目印にするか、隠した者の身になって推理しましょう。
 いずれにしても、1回や2回の現地調査でポイントが絞り込めるはずがありません。しばらくはデスクワークとフィールドワークを交互に繰り返すことになるはずです。焦らず、気長にゆっくり、謎解きと推理を十分に楽しみながら進めていきましょう。
 フィールドワークの際には、しっかり記録をとることが大事です。7つ道具としては、地図とコンパス(方位磁石)はもちろん、ノート、スケッチブック、筆記用具、カメラ、巻き尺があげられますが、そのほか、双眼鏡、ビデオカメラ、軍手なども用意したほうがいいでしょう。


5.「科学技術で埋蔵金に挑む」……いろいろな探査方法
▲コインシューティング用の金属探知機。3万円台から。
▲地下ケーブルなどを探る業務用の探知機。地下6mまでの空洞や異物がわかるが、価格は十万円以上。
▲地下数mまでわかる深層用高性能金属探知機の価格は100万円近い。

 最近は地下を探るいろいろな科学的方法が開発されていていますが、最初から埋蔵金探しのために作られた機器はありませんから、それを応用することになります。
 レジャー用の金属探知機は、もとはといえば地雷探知機なので、せいぜい地下20~30㎝までしか探ることができません。ただ、多少は性能アップされているようなので、対象物が大きければそれだけ地中深く探査することは可能でしょう。
 探知機の中で本格的な埋蔵金探しに役立つのは、ちょっと値段が高くなりますが、埋設ケーブルやガス管などの位置検出に使う業務用のものです。また、金属の種類もある程度わかる、精度の高い外国製の深層用探知機も手に入るようになりましたが、価格は100万円近くします。
 そのほかの探査法では、考古学の調査に使われる「地中レーダー」や、地下構造を探る「地下ロケーター」、古くからある地中の電気抵抗を測定する「電気探査」、あるいは、エジプトのピラミッドに未知の部屋があることを探り当てた「マイクロ・グラビティ・メータ(微重力測定器)」などがあります。
 埋蔵金探しのテレビ番組にも何回か登場した、ヘリコプターに積んだ機器で空から地下の様子を探る「空中電磁法」は、地下鉱脈を探査する方法で、費用もかかりすぎるし、埋蔵金探しには向いていません。
 また、本格的な発掘の前の試し掘りとして、ときどきボーリングをやる人がいますが、そんなに深くまで探る必要はないし、何よりも大事な財宝を傷つけてしまう恐れがあるので、絶対にやってはいけません。それに似た方法で、重さ5㎏から20㎏の鉄のおもりを、合計100㎏になるまで重ね合わせて負荷をかけ、直径19㎜の鉄棒を地下5mくらいまでさしていく「スウェーデン式サウンディング」というのがありますが、これなら有効です。
 それから、この世界にはよく非科学的なものを持ち込む人がいます。1つは「ダウジング」というもので、ルーツは、古代エジプトの水脈占いにあるそうです。中世、ヨーロッパで錬金術と同様に研究が盛んだったということですが、科学的な根拠はあまりありません。昭和30年代に埋蔵金探しに使われた「梶川式探知機」というのがこれで、その使い手だった梶川淳造氏(昭和41年没)は、アメリカで石油の鉱脈や水脈探しで成功を収めたといわれていますが、日本での埋蔵金探しにはことごとく失敗しています。もう1つは超能力や霊感で、年輩の人にこれに頼る傾向がみられます。しかし、ヒラメキやお告げで埋蔵金が見つかったためしはありません。各種の探査方法についての評価は以下の通りです。

■各種探査法についての評価
1.金属探知機 コインシューティング用は地下20㎝~30㎝程度。対象物が大きければ1m以上か? 業務用や深層探査用は6mくらいまで。
2.地中レーダー 地下3mまでの構造や異物の存在がわかる。
3.地下ロケーター 地下約30mまでの構造や異物の存在がわかる。
4.電気探査 精度は1.2.と同等だが、取り扱いが難しい。
5.微重力測定器 大埋宝ならとらえられるかもしれないが…。
6.空中電磁法 鉱脈調査用なので、埋蔵金向きではない。
7.サウンディング 地下5mくらいまでの異物を直接調べることができる。
8.ボーリング × 財宝を傷つけるので絶対やってはダメ。
9.ダウジング × 詐欺の小道具にされることがあるので要注意。
10.超能力・霊感 × この世界では通用しないので、信じてはダメ。

▲地中レーダーのボックス型アンテナ(左)と、地下の断面を表示する
モニター
▲微重力測定器(写真/川崎地質)

 
▲スウェーデン式サウンディング。おもりで負荷をかけ、鉄棒を地下にさしていく。異物があると鉄棒がそこで止まる。   ▲ダウジングのルーツは、古代エジプトの水脈占いとか。私も何度か使ってみたが、反応があったためしがない。

■簡易ボーリングの新兵器登場!
 上にご紹介した「スウェーデン式サウンディング」は、地下にある異物を探る方法として非常に有効なもので、大型のボーリング機械だと、大切な財宝を傷つけてしまう恐れがありますが、その心配があまりありません。
 先祖が隠した大判を探し続けているYさんは、原理的にはこれと同じものを最近自作しました。おもりで負荷をかけるのではなく、電動ドリルの先に直径10ミリの鉄棒をつけ、1メートル単位でつぎたしていくもので、作業はとても楽です。土質の軟らかいところだったら、4~5メートルまでは十分探査できます。


■金属探知機に関する情報の入手先、購入先
◇アイメックストレーズ IMEX TRADES CO.
〒520-0002 滋賀県大津市際川二丁目25-26    
TEL:077-527-1017 FAX:077-527-0897
◇TSトレーディング TS Trading Co Ltd., 
〒271-0093 千葉県松戸市小山198-28
TEL:047-703-1640 FAX:047-703-1641
◇海外の金属探知機およびトレジャー情報




6.「カネを使わず頭を使おう」……発掘の際の心構え

 さて、謎解きと推理で絞り込んだ場所に、金属探知機などの反応があったなら、当然そこを掘ってみたくなりますね。もちろん、他人の土地であれば、ちゃんと発掘許可をとらなければなりません。国立公園内や史跡など、特別の場所の場合、すぐには許可が出ないこともあります。かといって、無断で掘ることは許されません。特別の場所であっても、根拠を示せば、理解してもらえる可能性もありますから、あきらめないこと。
 では、具体的な方法の解説に入る前に、発掘に際しての心構えについて、私の考えを述べます。
「埋蔵金の発掘には、ずいぶんお金がかかるでしょう?」
 そんな質問をよく受けます。そこで私はこう答えます。
「そうですね。かかりますね。道具をそろえるだけで1万円から2万円、4、5人の仲間でたとえばキャンプをしながら5日間くらい掘るとなると、場所にもよりますが、交通費と食料代で1人あたり2万円から3万円はみなきゃいけないでしょう」
 すると、多くの人はキョトンとします。もっとかかると思っているのですね。そう思われる理由の1つは、テレビ番組などで重機を使って大がかりな発掘をやってみせることがあるからです。そう、確かに重機を使えばたいへんなお金がかかります。短い期間に100万円単位でお金が“消えて”いくことにもなりかねません。でも、テレビ番組は見せることが目的ですから、わざわざ大がかりにするのです。それが素人目には本格的な宝探しのように見えますが、実は“まねごと”であって、本物のトレジャー・ハンターは、そういうことはしません。
 考えてみてください。昔の人は重機を使って穴を掘り、財宝を埋めたわけではありません。多くの人手を使ったこともあったかもしれませんが、それでもすべて手掘りのはずです。ですから、そのあとをなぞるように、スコップやつるはしでていねいに掘っていかないと、重要な痕跡を見逃してしまうのです。一度掘られた穴は、何百年たってもあとがはっきりわかります。
 いずれにしても、日本には100%確実な埋蔵金など1つもないわけですから、大金を投じて発掘することは、実にばかばかしいことです。
 もう一つ重要なことがあります。それは掘る深さの目安です。テレビ番組でなくても、重機を使って地下数十mまで掘り下げる人がいます。いったい何を考えているのでしょう。昔の人が、そんなに深い穴を掘ることができたはずがありません。埋蔵金は、何らかの目的があって一時的に隠したものです。いざというときには、すみやかに掘り出して、目的のために使わなければなりません。となると、掘り出すのに何か月も何年もかかるようでは意味がないわけです。
 そこで、これまでの経験から、私は深さの目安を
5mから6mと考えています。それくらいだったら、3人か4人いれば1日以内で掘り出すことが可能ですし、費用もたいしてかかりません。ついでに言えば、これまでに発見された埋蔵金で最も深かったのは1.5mです。

7.「一鍬が運の分かれ目」……発掘のノウハウ
 では、いよいよ具体的な発掘の方法について解説しましょう。
 地面の下はほんとうに未知の世界です。探知機で反応があったとしても、実際に掘ってみなければ財宝の有無はわかりません。そして運が悪ければ、たった5㎝のずれでも見つからないわけです。「一鍬が運の分かれ目」とはよくいったもの。
 ▼遺跡調査で使われるトレンチ法

 何らかの方法で、文字通りピンポイントまで場所を絞り込むことができたら、そこを掘ればいいのですが、たいていの場合、範囲がある程度広くなってしまいます。そこで、遺跡調査などに用いられる「トレンチ法」が有効です。トレンチとは塹壕のことで、幅50㎝、深さ50㎝程度の溝を掘っていき、痕跡を調べます。自然層とちがう部分が出てきたらしめたものです。
 縦穴を掘る場合、大きさは直径1.5mくらいがいいでしょう。狭すぎると作業がしにくいし、大きいと掘り出す土が多くなって能率が上がりません。深さは、1.5mくらいまではスコップで土を上げられますが、地面が胸より高くなるとしんどくなるので、ロープのついたバケツなどで上から引き上げる役目の人が必要になります。それも3mか4mが限度で、それ以上深くなったら、やぐらを組み、滑車で引き上げるのがいいでしょう。やぐらは、ふつう3本の丸太か角材を組んでつくります。太さは丸太の場合、直径10㎝程度、角材も1辺10㎝はほしいところです。長さは直径が1.5mの穴の場合、バランス的には3mがベストです。
 穴は、深くなればなるほど危険度がましますから、周りのものを落とさないように気をつけましょう。地盤が固ければだいじょうぶですが、軟らかい場合はヤマ止め(崩壊防止)の枠を取りつけたほうが無難です。ただし、これは素人仕事だとかえって危ないので、どうしても必要な場合はプロに頼んだほうがいいでしょう。
 また、掘り出した土は3倍ほどにふくらむので、あらかじめ土を捨てる場所も十分に確保しておかなければなりません。
 さて、せっかく掘ったのに財宝が見つからない場合、あなたはどうするでしょう。あっさりあきらめますか? それとも…。見つからない理由は次の3通りで、必ずこの中から結論の選択をせまられることになります。

●伝説は作り話で、埋蔵金は実在しない。
●埋蔵金は実在し、場所もぴったりだったが、すでにだれかに持ち去られたあとだった。
●埋蔵金は実在するが、まだ届いていない。あるいは場所がちがっている。

 ふつうはだれでも3番目を選択しがちです。私自身もそうでした。「あと10㎝掘れば出てくるかもしれない」必ずそういう気持ちになります。発掘を続行するかどうか、それはあなたが決めることです。存分におやりなさいと言いたいところですけれども、いつかは踏ん切りをつけなければなりません。埋蔵金の発掘で最も重要なのは“引き際”です。くれぐれも自分を見失わないように。無理のない範囲で続行しましょう。
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