8月27日(日)午前5時40分過ぎ、東の空がやっと明るみはじめたころ、私はタレントの石塚英彦さん、安めぐみさんと並んでテレビカメラの前に立ちました。そして、24時間テレビ総合司会・徳光和夫さんの、日本武道館からの呼びかけに応じて、「宝を必ず掘り当てます!」
▲ふだんは静かな牧場に、重機のエンジン音が響いた。
▲老若男女、島民の方が総出で調査と作業に協力してくれた。
 と、決意表明をして、いよいよ宝探しに取りかかりました。
 まず、島の方にじゃまな雑草や低木を草刈り機で払ってもらい、X地点のサンゴの岩を重機で取り除きました。地面がならされ、動きやすくなったところで地中レーダーをかけ、地下の様子を探ります。残念ながらはっきりした異状は読み取れません。次に重機で表面の土を薄くはがしていきます。どうやら地下はサンゴの岩盤になっているようです。一部、岩盤のすき間が現れました。トンネル状の空間に土が詰まっているようです。ここからは手掘りです。私もツルハシを持って穴の中に入ります。詰まった土を掘り出せば、その先にある“何か”が見えてくるかもしれません。
 でも、土の詰まったすき間はすぐになくなりました。奥に続いている様子はありません。仕方なく、探索範囲を広げていきます。表面の土を重機ではがし、岩盤が出たところで手作業に転換。この繰り返しです。
 そんな発掘作業の様子を、約1時間おきに生中継しました。徳光さんはじめ、武道館の久本雅美さん、篠原涼子さんらの期待が、モニターテレビを通じて伝わってきます。
 途中から、X地点の発掘は宝島小中学校の先生と児童・生徒にバトンタッチしました。平峯校長先生を先頭に、湧太君、洸太君の6年生の双子の兄弟らが元気いっぱいにショベルをふるいます。そして、本隊のほうは金属探知機に強い反応のあったZ地点を重点的に探ることにしました。Y地点は何も反応がないので、今回はパスです。Z地点はもう少し地中レーダーで詳しく調べたいので、じゃまになる大きな岩などを重機でどかし、地面をならします。しかし、レーダーは確かな異状はとらえません。ところが相変わらず強い金属反応が…。そこで、重機で20㎝を目安に、少しずつ土をはぎ取っていくことにしました。2回、3回と、大きなバケットが注文通りに動きます。オペレーターは島の青年団の人で、もちろん免許は持っていますが、専門家ではありません。
「もう何か見えてきてもよさそうなものだが…」
 そう思って重機を止め、ショベルで少し掘り進めながら様子をうかがったのですが、地下はもう自然層のような気がします。念のために探知機をかけてみると、反応がなくなりました。そこで、無駄とは思いながらも掘り出した土を広げて何かないか調べてみましたが、これといった金属質のものはありません。
「土中に鉄分の濃度の濃い部分があったにちがいない」
 不思議がる出演者とスタッフにそう説明しました。よくあることです。何度も経験しています。ただ、そのことを生中継で説明する時間がありませんでした。
 そうこうしているうちに、X地点で見落としがないか調べていた金属探知機に反応があり、草むらの中から錆びついた古銭が見つかりました。「永楽通宝」でした。室町時代に明(みん)から大量に入ってきた渡来銭で、安土桃山時代に日本でも作られ、江戸時代の初めまで流通していますが、なぜそれが牧草地に落ちていたか不明です。
 それ以外に、宝らしいものは何も見つからないまま日没を迎えました。午後7時前、あかね色に染まる海をバックに生中継の終了を宣言。その後も少しだけ探知機を手に歩き回りましたが、暮れるとハブが活動を始めるので危険です。後ろ髪を引かれる思いで現場をあとにしました。夜明け前から日没まで、13時間半もほとんど休みなしで掘り続けたことになります。
▲放送終了後、宿泊した民宿「サンゴ礁」でご主人・奥さん(右の2人)とともにくつろぐ出演者とスタッフ。右から4人目が石塚英彦さん、テーブルを挟んで左側が安めぐみさんと八重野。
 それにしても、今回の探索は島民の方々の協力なしではとても実現不可能でした。これまで、キッドの宝探しが目的で島を訪れる人がいても、島民との交流はほとんどなく、この伝説を信じる島民も、むしろ少なかったのです。それが、今回は多くの人が本気で宝探しを手伝ってくれました。29回目を迎えた今年の24時間テレビのテーマは「絆」。スタッフ・出演者と島民の方々とのかたい「絆」は、画面を通して伝えられたのではないかと思っています。そして、キッドの宝こそ見つかりませんでしたが、島は有形無形の素晴らしい宝に満ちあふれています。人々の温かい心、優しさ、明るさ。そして、美しい海が育むさまざまな味覚。陸にも、島落花生、パパイヤなど、独特のものがあります。合計約2週間の滞在中に、そういったたくさんの宝を、私は見つけることができました。


◆24時間テレビのための宝島での宝探しは終了しましたが、日本トレジャーハンティング・クラブの仲間で関心をもっているメンバーもおり、できれば引き続き調査を実施したいと思っています。早くも2007年1月上旬には、N氏(64歳)が単身現地へ乗り込み、独自の解釈で島南部の某所を探索、その詳細な報告についてクラブで分析しています。

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