“THE WORLD'S GREATEST TREASURE HUNTER”Mel Fisher 世界一のトレジャーハンター、メル・フィッシャー氏を訪ねて
1994年3月、私は長年の念願を果たすべく、アメリカ・フロリダ州のキー・ウェストを訪れました。目的は、世界最高の実績をもつトレジャーハンターである、メル・フィッシャー氏との会見。1985年から86年にかけて、彼が探り当てた莫大なスペインの財宝の魅力もさることながら、メルという人がいったいどんな人物なのか、どういう気持ちでトレジャーハンティングに取り組んでいるのか、直接会って確かめてみたかったからです。 遠来の珍客を、彼は快く迎えてくれました。この世界では“神様”といわれる人ですから、いささか緊張していたのですが、彼の笑顔と、親しげに差し出してくれた大きな手に触れたとたん、緊張は一気にほぐれました。 「私も20年間、日本で埋蔵金探しをしていますが、まだ実績を上げられずにいます」 自己紹介のつもりでそういうと、 「ぼくだって『アトチャ号』の宝蔵を探り当てるのに16年かかったんだからね。きみもそのうち発見できると思うよ。がんばりなさい」 と、励ましてくれました。そして、 「トレジャーハンティングほどエキサイティングなことはないよ」 そういってにっこりとほほえみました。 その目の輝きは、私がこれまでつきあってきた何人かの日本の老トレジャーハンターに共通するものでした。アメリカ人で、しかも沈没船の宝探しの本場、フロリダをベースにしている人だから、これを事業と考えてやっているのかと思っていたのですが、全然ちがいました。彼にとっても、沈没船の財宝はロマンの対象なのです。日本の人たちとちがう点は、やり方が実に緻密で、科学的かつ合理的だということ。これで成果が上がらなかったら不思議です。 会見の最後に、写真の撮影をお願いすると、メルは金庫から長さ2メートルはある黄金の鎖を取り出してきて、自分と私の首に回し、カメラに向かってくれました。そして、パンフレットにこうサインしてくれました。 “Today's the day Mitsuhiro, Mel” これはメルがモットーとしている言葉で、日本語に直訳すれば、「今日がその日だ」ということになるでしょうが、「今日こそ(財宝を)見つけてやるぞ!」という、強い意志がこめられています。アメリカと日本では事情はずいぶんちがいますが、やはりトレジャーハンティングに取り組む以上は、そういう強い願いをもたなければ損だと、改めて思いました。 あとでわかったのですが、実はこのとき、メルの体はガンに冒されていたのです。そして、1998年のクリスマスの直前、彼は76歳でこの世を去りました。ここにご紹介する会見のときの記念写真とサインは、私の大切な宝物となりました。 |
フロリダ州キー・ウェストに、メル・フィッシャー氏が引き揚げたスペインの沈没船の財宝の数々を展示する博物館があります。
また、博物館を出たところにあるショップでは、トレジャーハンティング関係の資料とともに、引き揚げ品の金貨や銀貨などが販売されています。ホンモノはちょっとお高いですが、手軽に買えるレプリカもちゃんと用意してあります。なお、商品はインターネットの通信販売でも購入することができます。詳しくは以下のURLへ。 ●Mel Fisher's treasure site http://www.melfisher.com |